
ガス給湯器は、その能力に応じていくつかの分類があります。その能力を示す数値として「号数」というものがあります。簡単に言うと号数の数値が大きいほど給湯能力が高く、同時に多くのお湯を沸かすことができます。しかし、その一方で多くのガスを消費するだけでなく給湯器そのもののお値段も高くなります。そのため、「大は小を兼ねる」という簡単な号数選びは適切だとは言えません。お使いになるご家族の人数や関連の設備など、あらゆる要素を全て考慮した上での号数選びでないと、後で「こんなはずではなかった」を招くことになります。
ちょっと難しい話になりますが、号数を算出する公式を見てみましょう。
号数 = (設定温度―水温)×毎分リットル数 ÷ 25
この公式によって号数は算出され、現在流通しているほとんどのガス給湯器は16号、20号、24号のいずれかです。
この公式の中で「設定温度―水温」というのは上昇温度のことなので、号数が高くなると冷たい水を一気にお湯にする能力が高くなることが分かります。それと同時に、毎分リットル数も大きくなるので、同時使用と言って例えばお風呂とキッチンで同時に大量のお湯を使うという場合でも号数が高いと両方に充分な湯量の供給が可能ということになります。
しかし、ここが落とし穴なのです。
もし、ガス給湯器販売会社の営業マンが「家族全員が安心して使えるように号数の大きなものにしましょう」と提案したとします。そんなにしょっちゅう買うものではないし、どうせなら能力の高いものを…とお考えになるお客様も多いかも知れません。
しかし、例えば号数が高くなるとそれだけ機器のお値段が高くなる(つまり、販売業者の売り上げが高くなる)ことになるので、必要のない能力のものを設置するのは無駄です。また、これは後述しますが高い号数の給湯器を取り付けるには、それに見合った周辺設備(ガスメーター、水道の水圧、配管など)が必要になります。
それらを全て考慮した上での号数提案なのか?お客様には、この点について賢くご判断されることをおすすめいたします。
給湯器の号数選びにあたって、周辺設備が号数に見合ったものになっている必要があるとお話ししました。それでは、実際の事例をもとにご説明しましょう。
ガス給湯器の買い替えを希望されているお客様がおられるとします。調べてみると激安販売を謳っている業者の価格が安いので、早速問い合わせてみることに。実際の商談になった際、その業者の担当者は言いました。
「ご家族全員が安心して使うためには、24号の給湯器が必要です」
号数についての知識を特に持ち合わせていなかったこのお客様は、そんなものかと言うわけで24号の給湯器を購入、設置を依頼しました。前の給湯器は出力が小さく、これでキッチンとシャワーを同時に使えなかったというお悩みが解決できるという、期待がふくらみました。
しかし、実際に使ってみると前の給湯器とあまり変化がない。前は16号の給湯器だったので2まわりも号数が大きくなっているから安心と言っていたのに…。
このお客様のご自宅を調べてみると、給湯器の号数に耐えられるだけの周辺設備がないことが分かりました。水道の水圧が24号給湯器に充分な水を供給できないのです。本当に給湯器を満足に機能させるには、この水道設備を考慮する必要がありました。
この事例では水道設備のことを全く考慮しない号数選びのご提案がトラブルを招いたわけですが、他にも集合住宅全体でのガス供給量を考慮しない号数選びや、ガスメーターに関連するトラブルも多く見られます。
次の項では、ガスメーターの知識について解説します。
ガスをご使用になられているご家庭には、必ずガス会社が設置したガスメーターがあります。このガスメーターはガス料金請求のために使用量を計測するためのものですが、それ以外にもガス漏れを検知してガスを止めるなど、色々な役割を担っています。
現在、多くのご家庭に設置されているガスメーターは小さなものから2.5号、4号、6号、8号といったものがあります。2.5号メーターで使用できる給湯器は10号までで、4号メーターだと20号まで、6号メーターで24号、そして8号メーターだと32号までの給湯器を取り付けることができます。
もうお分かりかも知れませんが、号数の高い給湯器をご提案するのであれば、ガスメーターの能力を考慮しなければなりません。先ほどの事例で24号給湯器を取り付けるのであれば、ガスメーターが6号メーター以上である必要があります。
では、現在4号メーターがついている場合はどうすれば良いのでしょうか?これは、ガス会社に連絡をするとすぐに交換してくれます。費用は無料です。なぜなら、ガス会社にとってこれは安全化義務という供給者の責任があると同時に、多くのガスを使用してくれる機器の取り付けはメリットがあるからです。
しかし、ここにも落とし穴があります。
ガスメーターの交換作業を有償であると偽ったり、ガス会社への交換依頼という電話一本のために何らかの料金を請求する業者がいるという事実があります。明らかに給湯器そのものの原価を割り込むような激安価格で販売するとなると、このように別の部分で稼いでいかないと商売にならないということなのでしょう。
エコブームの広がりとともに、環境性能の良い商品に「エコ」という名前をつけるのが大流行りです。ガス給湯器の業界も例外ではなく、「エコジョーズ」という商品名を聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。
「エコ」と光熱費の節約でやりくり「上手」であるという意味の言葉を合わせた造語なので、何となく「光熱費が安くなって環境にも良さそう」というイメージが浸透しています。しかし、実際にエコジョーズとは一体何かという点についての情報が少ないのが現実です。なぜなら、メーカーやガス会社の思惑ほど普及していないからです。その理由は、やはり価格。従来のガス給湯器と比べると本体価格が高いので、これが敷居を高くしてしまっているようです。しかし、燃費が良くCO2の削減効果が高いことは事実なので、長期間の光熱費削減によって元が取れることや、補助金などの活用でうまく導入すれば「エコ」で「上手」になります。それでは、具体的に計算をしてみましょう。
20号のエコジョーズ給湯器(本体22万円)を設置する場合
本体を定価の60%OFFで購入し、工事代金が45,000円〜なので、ここでは45,000円とします。さらに、エコジョーズは22,000円の補助金が出ますので、これを計算すると・・・
220,000円×0.4 + 45,000 − 22,000 = 155,000円
では、従来型のガス給湯器についても同じ条件で計算してみましょう。
本体価格が12万円で75%OFFだとして30,000円、工事代金が30,000円〜なので30,000円とすると・・・
120,000円×0.25 + 30,000 = 60,000円
一般的に、エコジョーズは年間で11,000〜13,000円程度のガス代節約が可能であるとされています。つまり、9年から10年で設置費用の元が取れる計算になります。
ならば、エコジョーズは買いか?
ちょっと待ってください、ここまでは一般的な営業トークにも見られるものです。
しかしガスナビは、ここから先の知識も踏まえた上でご判断いただきたいのです。
エコジョーズはまだ普及が思っているほど進んでいないので、従来型の給湯器と比べて本体の割高感は依然としてあります。また、エコジョーズはマンションなどの集合住宅では設置できないことが多く、その場合は検討そのものができないことになります。
まだ登場して間もないエコジョーズは手探りの部分が多く、寿命や故障頻度などについての統計が出揃っていません。販売業者にとっては売り上げを伸ばせる商品なので、積極的な販売が行なわれていますが、総合的な判断では時期尚早と言えるかも知れません。
今後普及が進み、本体価格が現在よりも2〜3割程度安くなるようであれば、その時はいよいよ買い時となることでしょう。
これはあまり知られていないことですが、エコジョーズを使用すると「ドレン」という排水が出ます。従来のガス給湯器にはないもので、エコジョーズを設置するためにはドレンをうまく流してやるための排水工事が必要となります。エコジョーズの設置工事が若干割高になっているのはこの排水工事が含まれているのも理由のひとつです。
ドレンをうまく流せる場所がない場合はエコジョーズの設置そのものが難しくなりますが、一部の業者では排水を流すところが確保されていないのに、エコジョーズを設置してしまうことがあります。
行き場を失ったドレンが住宅の構造部分に流れてしまうと、木造建築の構造部分が腐食したり、シロアリの温床を作ったりすることにもなります。ガス代を節約するつもりで設置したエコジョーズが、家そのものを壊してしまっては本末転倒です。
エコジョーズの設置をご検討のお客様は、こうした点を総合的にご判断いただくのが最も賢い比較検討につながると思います。